★ 郁子の勇気の出る音楽の広場 ★
シカゴ生活情報誌Qマガジン Vol. 42 より
|
<その10> 筋肉をつける お転婆のくせにスポーツは得意ではなかったので秋の運動会は嫌いだった。走るのも遅かったし球技も下手だった。唯一好きだった水泳も競争させられて嫌いになり、大学時代よく通ったスキーも、夜の街に繰り出して遊んだ事は思い出しても、険しい斜面を滑った記憶はない。 そんな訳で今もスポーツとは縁遠い生活をしているのであるが、人並み程度に観戦はする。夏にあったオリンピックもその程度に、誰を応援するでもなくただ漫然とテレビを見ていた。そこで一つ気が付いたことがある。それは競技種目によって選手の筋肉の付き方が全然違う、というごく当たり前のことだった。 短距離走者と長距離走者の筋肉の付き方は明らかに違う。瞬発力を磨くトレーニングと持久力をつけるトレーニングでは同じ「走る」ことであってもこれだけ違ってくるものかと感動さえ覚える。走るのが得意だった人たちがどこかで「よし、自分は100mで勝負しよう」「私は長距離でいこう」と専門分野を絞り、それに向かってトレーニングを積む。もちろん初めからそれぞれの競技にあった筋肉を持つ人はいないわけだから、全て忍耐強い練習の賜だということになる。それは逆に言うと、忍耐強い練習を重ねると誰にでもそれに合った筋肉を付けることが出来る、と言える。 子供のうちから始めれば相当なものが期待できるだろうけど、大人になってからでも正しい訓練を繰り返せばその競技にあった筋肉は培われるはずである(オリンピックに出るのは望めないかもしれないが…)。もちろん「筋肉」という目に見える結果になるまでには、ある程度長期に渡って休まず訓練を続ける必要がある。 正しい訓練を積めばそれに合った筋肉が出来る…。「筋肉」という言葉を「skill」、つまり「特殊な技能」に置き換えても、同じ事が言えるのではないだろうか。技能は筋肉のように目で確認出来ないので実感するのが難しい。しかし大人になってからでも(程度の差こそあれ)身に付くことは確実である。ここで重要な事は、ある時期徹底してその事に集中しないとその筋肉(技能)は身に付かないということである。中途半端だとなかなかその道の「こつ」を掴むことは出来ないのである。
| シカゴの寒い冬の過ごし方として、私は楽器を始めることをお勧めします。 自分の好きになれそうなものならどんな楽器でも構わない。良い指導者を見つけ良い楽器を手に入れれば、後は毎日練習あるのみ。最低30分、3ヶ月続けること。そうすれば必ずその楽器に合った「筋肉」が付くはずである。3ヶ月真面目にやってもし効果が現れなかったら、それは貴方のせいではありません。指導者のせいです。すぐに他の先生を捜しましょう。大切なのは、一番最初にある程度集中して練習し、「筋肉」をつけることである。筋肉がつかないと練習していても面白くないので長続きしない。だから最初の3ヶ月、兎に角騙されたと思って練習することから始まる。 11月に始めれば春には筋肉もある程度つき、様になっているはずである。トルストイの著書「クロイツェルソナタ」には、バイオリン弾きの友人とデュエットを楽しむ妻に「あいつらは絶対出来ている」と確信してしまう嫉妬に狂った夫が登場するが、「一緒に演奏する」という行為は、嫉妬されるに値する程の喜びを与えてくれることは事実である。嫉妬に狂う夫ではなく、至福の喜びを知る妻に、あなたもなることが出来る。その喜びを一人でもたくさんの人が味わう事が出来れば、世界はもう少し平和で住み易い所になるのではないだろうか。 今回の一曲 J.S.Bach 作曲 シャコンヌ Chaconne -Partita No.2 in D Major for Violin , BWV 1004 より
今回はギターの曲を紹介したかったのでその為に書かれたオリジナルを探したが、庶民には早くから親しまれながらクラシック界では無視され続けてきたこの楽器、いわゆる「クラシック音楽」という分野ではオリジナルが非常に少ないことで有名である。その為優れたギター奏者は他の楽器の為に書かれたものを精力的に編曲し、今やそれがオリジナルのように思われている作品も多い。 このシャコンヌも、もともとバイオリン独奏の為に大バッハが書いたパルティータ2番のなかの一つの楽章であるが、独立して演奏されることも多く彼の偉大な功績の中でも名曲と言われている。バイオリン奏者による名演奏はたくさんあるが、ギターなら何と行ってもセゴビア(Andres Segovia)である。1987年に94才で亡くなるまで精力的に世界を駆け回り、演奏活動と教授活動を行った「クラシックギターの神様」なのであるが、何度も結婚し70過ぎて若い妻(もちろん元生徒)との間に子供も儲けるほど私生活も精力的で俗物的であった。素晴らしい。その点は「チェロの神様」カザルスとも共通する。 春からギターを習いだしたもののなかなか上達しないのでゲンナリしているが、大好きな曲「Afro-Cuban Lullaby」が弾ける日を夢見て、暇を見ては練習に励むこの頃である。それにしてもFコードは難しい…。 |