郁子.Armandiのシカゴ便り


★ It's a small world ? ★

シカゴ生活情報誌Qマガジン  Vol. 36 より


時々小学校を訪ねて日本の歌や遊びなどを教えている。様々な外国語を教えている学校がシカゴ市内に幾つかあり、文化的な面からの理解を深める為、教育委員会が音楽家や舞踏家、絵描き等を派遣して担当教師のお手伝いをするプログラムに関わっているのである。スペイン語圏の人が最も多く、フランス・ドイツ・中国語などの人がいて、時々行われるミーティングは賑やかで面白い。もちろん私は日本語のお手伝いである。

 

今年で3年目になるが、ぬくぬく育った私からは想像も出来ないような苛酷な現実の中で生活している子供達もいる。しかしどの子供もそれぞれに可愛い。爆弾を買うお金はヤマほどあっても情操教育に回すお金はほとんどないので、音楽の授業などない学校も多い。今まで一度も歌った経験が無いのであろうと思われる子供に出会うこともある。「黒人は生まれつきリズム感が良い」、そんなものは大ウソである。

 

その中のある学 校から「『平和』をテーマにした発 表会が5月にあるので、是非この歌 を歌いたい」とのリクエストが来た 。その歌とはディズニーのテーマ曲 、「It's a small world」である。

 

作詞・作曲 :Richard M. Sherman / Robert B. Sherman

 

It's a world of laughter. A world of tears

It's a world of hopes. And a world of fears

There's so much that we share. That it's time we're aware

It's a small world after all

 

There is just one moon. And one golden sun

And a smile means Friendship to ev'ryone

Though the mountains divide. And the oceans are wide

It's a small world after all

 

It's a small world after all. It's a small world after all

It's a small world after all. It's a small, small world

 

これに日本語訳があり、日本でもよく歌われているそうだ。子供達は大好きなこの曲を屈託無く歌うだろう。リズミカルなメロディなので、大人もきっと楽しいだろう。しかしここにある歌詞のように果たして世界は本当に小さいんだろうか。遠く離れた想像も出来ない所に暮らす人々の、悲しみや怖れなどを我々に分かち合うことができるのだろうか。アメリカによる侵略戦争が始まった今も、この歌を平和のメッセージとして歌うことができるだろうか。

 

この曲は、 単純なディズニーの世界をとて もよく表している。良い人と悪 い人が出てきて、良い人は悪い 人達にいじめられて大変な思い をするが、最後は良い人が勝つ 。それは「Are you with us or against us?」という思想に もよく似ている。

 

それに比べ るとディズニーが買い取ってア カデミー賞まで取った「千と千 尋の神隠し」の成熟度はどうだ ろう。良い人も悪い人も出てこ ないこの映画、そこにいるのは 時には良い人になり、時には悪 い人になってしまう我々がいる 。何だかよくわからないあなた だけど一緒に行きましょう、と 言う白でもない黒でもない、灰 色の現実を肯定する愛を見る。

 

カオナシを 一緒に連れていく千尋に泣ける 。日本が懐かしくて泣ける。そ して最後の最後に、名曲「いつ も何度でも」が流れてくるので す。まだ見てなかったら是非見 て下さい。日本人で良かったな あとおもわせてくれるから・・ 。こんな素晴らしい映画を作る ことの出来る素晴らしい日本な のに、「アホで間抜けな」アメ リカに追随することしか知らな い日本の政治家は「もっとアホ で間抜け」である。

 

「アメリカ は戦争でイラクの人を殺すので はなく、助けているのだと子供 に教えなさい」とテレビの中の 専門家が喋っている。通信機器 の急速な進歩で狭くなったはず の世界は、去年の9月11日以 降どんどん遠のいているのを感 じる。アメリカの子供達が「It's a small world 」を楽しく歌う姿を素直に喜べる日が、早く来て欲しいと思う。

 

今回のお勧めの一曲

 

モーツアルト 

W. A. Mozart

クラリネットと弦楽四重奏の為の5重奏 イ長調 K.581

Quintet for Clarinet and String Quartet in A major, K. 581

 

2年ほど前、シカゴシンフォニーの主席クラリネット奏者Larry Combの演奏でこの曲を初めてライブで聞いた。2楽章を聞いている時「至福」という言葉が頭に浮かんだ。フェロモンが出る感じ・#65288;いや、アルファ波か・#65289;。彼の、手を抜かない真摯な演奏は素晴らしかった。モーツアルトの音楽は純粋にそれだけで美しい。しばし現実から離れて「至福の時」を持って下さい。新たに現実と闘う勇気を持つために。

 

この曲はよくブラームスのクラリネット5重奏(同じ編成)と一緒にしてCDになっているので(負けず劣らず美しい!)、どうせ買うならセットになったものお勧めします。